ジオ・開田

☆ 開田村の化石・2 ☆

開田村から産する中生代の放散化石について

開田村には、中生代の「基盤岩類」と、それを覆う第三紀から第四紀の若い火山岩類や地層が分布しています。
私は、1995年度から信州大学理学部地質学科の卒業研究として、開田村の基盤岩類の研究を始め、主に把ノ沢や西野の集落の周辺で地質調査をさせていただきました。
この結果、開田村の基盤岩類には、保存の良い「放散虫化石」がたくさん含まれていることがわかりました。
そこで、この「放散虫化石」とは一体何かということについて、簡単にご紹介したいと思います。

信州大学大学院
理学研究科地質学専攻
修士2年 奥村さん
 
奥村さん

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開田村の基盤岩類

開田村の基盤岩類は、砂岩や泥岩・珪質泥岩・チャートなど、海の底で堆積したものから成っています。
特にチャートは、陸地から遠く離れた遠洋域で堆積したものです。
チャートを乗せた海洋プレートが何千キロも移動してきて、アジア大陸の縁で沈み込むときに、上にのっていたチャートや、海溝で堆積した砂岩や泥岩などが大陸にくっついて(これを付加といいます)、「付加体」を形成します。
開田村の基盤は、まさにこの「付加体」でできています。

放散虫の化石

放散虫は、約5億年前(カンブリア紀)に初めて地球上に出現し、現在も海中に生息しているプランクトンの一種です。
大きさは一般に0.1〜2.5mmで、珪質の骨格あるいは殻を持っています。
このため、堆積物中でも溶けにくく、化石となって残る場合があります。
放散虫の化石が含まれている岩石は、おもにチャートや珪質泥岩で、開田村では九蔵峠付近や藤沢川の上流などに露出しています。
これらの岩石をフッ酸(HF)という強い酸で処理すると、放散虫化石が溶け残るので、これらを光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて観察すると、様々な形をした繊細な構造の殻を見ることができます。

放散虫の殻の形は、年代とともに大きく変化することが知られているので、その形から、放散虫化石を含んでいる岩石がいつの時代のものかを知ることができます。
これによると、開田村の基盤岩類は、中生代の三畳紀中期からジュラ紀後期(約2億4000万年前〜約1億3500万年前)にかけて堆積したものであることがわかりました。
大陸では恐竜たちが栄えていた時代に、水深が数千メートルという陸地から遠く離れた深海底で、死んだ放散虫の殻が静かに静かに降り積もっていました。
それらが数千キロメートルも運ばれて大陸に付加して、約1億年後の現在、開田村の基盤岩の中から見いだされるのです。

放散虫化石
開田村のマンガンノジュールからみつかった 放散虫化石の電子顕微鏡写真
(大きさは 約 0.1〜1.3 mm)

次へつづく


この内容は、平成9年8月25日付 No.131『広報かいだ』 内 P.8〜P.9の記事を編集・転載したものです。
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